わたしたち教育福祉常任委員会では6月議会後、7月10日から11日にかけての子どもの権利に係る視察研修を行いました。
7月4日に調査研究会を持ち、視察先である全国的に注目される先進的なオルタナティブ教育を行う2つの私立学校に質問項目を送りました。
二宮町内の学校に居づらい、あるいは不登校になる町内100人規模の児童生徒に係る課題は当委員会も引き続き注力しています。文科省が不登校特例校の制度やフリースクールとの連携の推奨、校内居場所づくりなど対応施策を打ち出す中、町は二宮学園という小中一貫教育校設置に尽力してきました。議会報告会でも二宮学園として誰一人取り残さないというよりもむしろ一人一人の子どもの権利の視点から先進的なチャレンジをしてほしいという町民意見もあり、全国でも注目される実践事例をぜひ見学したいとの目的がありました。
視察には議員13名に子育て健康課、教育指導課の課長、議会事務局長が同行しました。
先ず第一日目は山梨県グリーンヒルズ小中学校を訪問しました。長野県で唯一、世界共通の教育プログラムである国際バカロレアを日本語で学ぶチャレンジが行われていました。創立当初は公教育に対して子どもたちに寄り添い「待つ」という教育方針を持つ学園でした。しかしアメリカ留学や文科省の特区制度に係る仕事で松本市の助役になった経歴を持つ新校長が赴任後は、公教育に2項対立するのではなく、混迷化する世界を見据え、社会の作り手として不確実な時代を生きる力を育てると方針転換されたそうです。強さと柔軟性を身に着け、我がこととして対峙し、コミュニケーションを尽くし、周囲と協働する力を子どもたちが持つことを使命とする学校を目指し、研究を続け国際バカロレア認定校となりました。国立公園内の自然環境を最大限活用する五感を育む学びと国際バカロレア探求プログラムの6つのテーマ
① わたしたちは誰なのか Who we are?
② わたしたちはどのような場所と時間に居るのかWere we are in place, in time?
③ わたしたちはどのように自分を表現するのか How we express ourserves?
④ 世界はどのようなしくみになっているのか?How the word works?
⑤ わたしたちは自分たちをどのように組織しているか How we organize ourselves?
⑥ この地球を共有するということ Sharing the planet.
さらに野外活動プログラムを主軸とする市川博美校長のプレゼンに私たちは心から引き込まれました。校長自身が社会的にコミュニケーションを尽くし、新しい道を切り開くフロントランナーの情熱に満ちていました。
「バカロレアは日本語で受けられる。まずは五感を磨き、我がこととして動き、学ぶ。母国語の概念で小学校から学びのオーナーシップを持つことが重要だ。。。。英語はまずは膨大に聴くこと。そして使うこと。テストなんかしたら終わりです。」
オーナーだから成績表の評価はまず自分で評し、次に教諭、学校からと双方からのレポートとして渡される。数値化しない。
長野の山奥でなければ、例えば二宮町にあれば、どれほど多くの広域の子どもたち、保護者達が引き付けられ、エンパワーされるのではと思わずにはいられなかった。
素晴らしい社会づくりの当事者である教育者とはこのような情熱をもって教育に関わるものか。英語を話すことが国際化ではなく何を我がこととして語り、協働できるかが重要であるという日本人そのものの生涯学習を問う学びもありました。
翌日7月11日に訪問した南アルプス子どものむら小学校は
話題になった映画「夢見る小学校」でも中心的に取り上げられている知る人ぞ知る既に全国で5校展開する学校法人です。「楽しくなければ学校ではない」「学校でなければできない事をする」「子ども自らカスタマイズし民主的なシチズンシップを身につける場である」という学園長 堀真一郎氏(前大阪市立大学教授)の理念のもと
小中ともにそれぞれ異年齢でプロジェクトに参加、教課横断的で活発な子どもがオーナーである学習が展開されていました。
各クラス(プロジェクト)担任のうち一人はバス運転免許を持ち、どんどん見学や旅行に行くというまさに飛ぶアクティブラーニングを運営している。ルソーのエミールを体現するような若い校長はこれは文科省の推奨する最先端の教育ですと明言した。
中学校はさらに自主的な学びの企画、運営が推進され、生徒たちで月一巻の冊子を出版するように決めている。教室はここの自主研究の机が並ぶまるで職員室のような様相だった。
広い厨房である教室には主催する果樹園の収穫物の桃や穀物の処理中の食品が並び、冷蔵庫には養豚場の収穫物が貯蔵されており、教室は活発な活動の作業現場であり、道具や資料にあふれていた。
あくまでも主体は生徒であるという一貫した理念が浸透し、おそらく公立の学校では困難な子どもたちが集まると思われるが、すべての一人一人が生き生きと活動する様子が見えた。
「いじめは関係の齟齬としてないことはないが、都度「どうしたの?」といって集まり、全体集会で共有して皆でかかわるので長期化しないし、不登校児童生徒はいない。日本では児童生徒の自殺が増えているが理由として明確に規定できるものではないが、少なくとも、成績と友達との関係が重要な要素ではないか。これは学校で起こること。だとしたらそれは学校が変わることで防げるはずだ。」と校長は力強く語られた。
視察した二つの学校に共通するのは児童生徒の一人一人が権利・学びの主体としてオーナ―であることでした。
当然評価するのはまずはオーナーである子ども、そして先生がアドバイスを書き込み、最後に学校としての感想やアイデアを書く。これがレポートという成績表にあたる。
子どもの尊厳を守り、自己肯定感を育む鍵があると感じられた。
その子らしくのびのびと成長し、混迷する時代を生きる協働する力を身に着ける公立の学校教育の推進につなげたいと持ち帰ってまいりました。
7月24日、8月20日に調査研究会を持ち、視察のまとめと昨年末の「協働の二宮町子どもの権利条例制定を求める提言書に続く調査研究活動の総括的な最後の提言書案を協議し提出を決めました。
また9月1日には昨年の提言書の協働の条例制定に向けた一歩として町民、および子どもたちを応援する団体が繋がる「にのみやこども権利フォーラム」が立ち上がり、行政の後援、20地区すべての地区長の回覧の協力を受けてキックオフシンポジウムがラディアンホールで開催されました。
継続する協働の動きの始まりとして高く評価し、期待するところです。
それでは提言書の内容を読み上げます。